歴史の抹消

西武ライオンズオフィシャルサイトに行ってみる。しばらくぶりに見てみると随分とリニューアルされている。今シーズンの選手名鑑のほかに「ライオンズのあゆみ」というコーナーがあり、球団創設からの出来事がいろいろと書いてある。これを見るといかに1980年代から1990年代前半にかけての西武が強かったのかを改めて思い知らされる。FA制度が導入されて選手をいつまでもチームにしばりつけられなくなった今となっては不可能なことだが、当時はレギュラーメンバーを固定してしまえばその後10年は安泰という時代だったから、次の世代を育てるという仕事はあまり重視されなかったのだ。
実際西武は1992年に日本一になって以降、何度かリーグ優勝はするものの、日本一に5度挑戦して5度とも返り討ちにあっている。名将といわれる森監督の後を継いだ東尾監督は監督初経験ながら、投手陣の立て直しには成功している。西口、豊田、森を育て(東尾の最大の功績はなんと言っても松坂の獲得と豊田をストッパーに据えたことだが)たものの、打撃のほうはやはりさっぱりで、清原亡き後今やセ・リーグ首位打者争いをしている危険や「ポスト清原(!)」の垣内の伸び悩み、ジンター、シアンフロッコ、ポール、デストラーデ改というハズレ外国人打者の連発によりその後数年間は恐怖の貧打時代が訪れることになる。ひどいときにはチーム内での最大HR数が15本前後という年があり、貧打ここにきわまれりという有様だった。かつての黄金時代を支えた秋山、清原、石毛、辻、田辺といった面々はFAやトレードで去り、彼らの後継と目された人材は育たず、新入団選手は足が速く小器用なタイプばかりで打線の中核を担うような人材も見当たらないという絶望的な状態だった(ただし、1997年1998年あたりの打線の終盤の粘り強さは異常で、ほとんどの試合は終盤まで投手陣が我慢して1点差くらいで食らい付き、8回に逆転して逃げ切るという試合がとても多かった、と思う)。ようやくマルティネスという大砲を得たものの、日本シリーズでまるで役に立たないという理由から解雇し(確かにまるで役に立たなかった)、「リーグ優勝できなきゃ日本シリーズもへったくれもないだろ」と僕はそのとき思ったのを覚えている。その後松井稼頭央がブレイクしたものの、松井とカブレラを抑えれば勝てるような打線で(最近ようやく和田が出てきたが)、迫力に欠ける打線という印象は否めなかった。
松井がFA移籍した今年は不幸にもカブレラを欠いてはいるものの、若手や今までチャンスに恵まれていなかった選手が奮起し打線が全体的にレベルアップしているように思える。少なくともマークすればいい打者が一人や二人ではないのがいい。日本シリーズは短期決戦ゆえに「こいつを抑えておけば勝てる」という傾向が強いといわれている。その点で今までの西武は打てる打者とそうでない打者の差が激しいために特定の打者をマークすれば比較的容易に勝ててしまうのだ。かつては「日本シリーズなんて勝って当たり前でしょ」と思っていたが、今となってはリーグ優勝からのあと7試合がとても遠い。それが「日本一になった者となれない者の差」なのか昨今よく言われている「パ・リーグレベル低い(プ」なのかわからないが(確かにラビットボールのせいか雑な試合が多い)、「大舞台で勝てる」力を西武ライオンズの皆さんには身につけて欲しい、って偉そうに。
パ・リーグプレーオフは各所ではボロクソに言われているが、今の西武は「強い球団との短期決戦」というシチュエーションにひどく弱い気がするからいい練習じゃないかと思う。毎試合捨てられない試合の連続で相手は常にエース級。相手を徹底的に研究し、少しの弱点を徹底的に突いて揺さぶって1点をもぎ取るという野球をしていたかつての西武に比べると、ここ数年の西武は確かにリーグ優勝はしているものの、まだまだツメが甘いと思わざるを得ない。今の西武だったら、近鉄に岩隈、バーン、パウエル、ダイエーに和田、新垣、杉内を当てられたらおそらく手も足も出ないだろう。そんな状態で下位チームから貯金を巻き上げて日本シリーズに出ても相手は○リックスや○ッテではないのだ。コテンパンにやられるのはある意味当然かもしれない。一説にはスコアラーが弱くなったという噂もあるが、おそらく現場がそれを生かしきるところまで成長していないのだろう。1点に厳しい野球をしなくても簡単に点が取れる今の風潮がこの傾向をさらに助長している気がしてならない。ちょっと心配。
しかし、2002年の日本シリーズ4連敗がなぜか記録から抹消されているのはいただけない。しょうがないでしょ隠したって。気持ちはわかるけど。